EUに関して。News Picksへの投稿云々

 EUは、超国家的性質と国家連帯(国家間の広域同盟)に基づく「政府間主義」のふたつの性質を持っていて、それらが絶えずぶつかっている。

 

 

 超国家的性質には各国の「国家主権」を脅かしているという批判があり、政府間主義にはものごとが決まらないという批判が出続けている。これはその通りだ。

 

 欧州連合は、クーデンホーフ・カレルギーの『パン・ヨーロッパ』や、昔のフランス大統領アリスティド・ブリアンの「ヨーロッパ連邦構想」にその端緒があり、ヤルタ体制などの欧州分断の歴史を経て、西ヨーロッパが統合され、ドイツ問題を克服し、徐々に進行してきた。

 

 

 そして領域移動の自由化と、共同通貨EUROの導入を行い、緩やかに経済の統合を進めてきたが、ここで問題がおこる。それは1)法的な問題と2)シェンゲン・ゾーンの問題であった。

 

 

 まず1に関して、EUは加盟する際に、「コペンハーゲン基準」はa)政治的基準(民主主義・法の支配・人権保証・マイノリティ保護)、b)経済的基準(機能する市場経済EU内市場の競争や変化に対応できる体制か)、c)法的基準(義務を遂行する能力、政治・経済・通貨同盟の目的の共有、EU法の採択と実施)、d)地理的基準(欧州の国であること)を満たす必要がある。さらに、EU法(アキ・コミュノテール)と各国の国内法との整合性を取っていく作業、を経てその理念の共有と行動を見て、EU内で各国に与えられる義務を履行できる国だけが加入できるようにしている。ところが、近年、ギリシャ債務不履行問題によって一気に状況が動いている。EUは<不正を行っていた>ギリシャ経済を救う為に連合の資金を拠出した。これは欧州の人々からしたら倫理的・道徳的問題であった。それはまさしくウォール・ストリートの失敗に対して、アメリカ政府が公金で救済した時と同じものであった。しかしそれよりも深刻なのは、EU内問題は、「国民国家」というひとつの共同体の中で起きているのではなく、ゆるやかな国家連帯の中で起きていることであって、「国民国家」内でおきるよりも「赤の他人」感覚が強いことである。

 

 

 次に、2について、国境の移動の自由化はシェンゲン協定批准国が多い、欧州圏で可能となっている。これはEU加盟国でなくとも、批准している国はあるが、EU圏とほとんど被っている。そしてこのエリアをシェンゲン・ゾーンという。これは、経済連携を高める為に極めて効果的な条約であったにも関わらず、近年ーここ23年ーで大きな問題がでてきた。それは<ISIS>だ。彼らは中東地方で多くの難民を生み出している。そしてその難民は、シェンゲン・ゾーンに含まれていないトルコにはいる。それはドイツを目指しているからだ。さて、ドイツを目指しているからトルコに入る理由は、トルコからギリシャは小さな島でつながっているために、警備が手薄でシェンゲン・ゾーンであるギリシャまで容易にはいれるからだ。すると社会保障政策の手厚いドイツに難民はたどり着ける。ゆえに、メルケル首相が現在難民・移民の急増で窮地にたたされている。

 

 

 そして、特筆すべきはロシアだ。彼らはシリア空爆を続けている。これはアサドの支配圏だが、これによる難民の発生も看過できない。もし、ロシアの空爆がシェンゲン・ゾーン(EU圏)の弱みをついたEUへの攻撃だとしたら、なすすべがない。

 

 

 そして、シェンゲン協定のために、難民の侵入を指をくわえて見ているだけだと、人々は不満を持つ。「なぜ奴らの食い扶持をかせがにゃならんのだ」と。そこで、フランス国民戦線、「ドイツのための選択肢」など排外政党が力を持ち始めている。彼らは言う「自らの国民の保護を優先すべきだ」と。難民にくれてやる金などないんだ、と。しかし、EU法で人権保護が定められていて、履行しないわけにはいかない。ところが経済状況がそれを許さない。ドイツは依然として経済成長を続けているが、他の国々はその限りではない。(なんで NPには統計データの画像が貼れんのだ!!)ここにきて、債務不履行をしたくなるが、EU内ではできない。じゃあ、どうするか? 抜けますか、と。実はイギリスはEURO圏でもシェンゲン・ゾーンでもない。そんなイギリスが脱退ということを考え出す理由のひとつは、「沈みそうな船にいつまでも乗っていられるか」ってことだろう。イギリス人は強かな外交能力を持っている。彼らならそう考えていても不思議ではない。

 

 

 いまのEUの問題は、上記の限りで考えると、難民問題・経済問題・領域問題・主権問題・法的問題が挙げられる。これらが複合的に組み合わさり、EU脱退。そしてその先にEUの空中分解が見えている。メルケルは、難民問題について、ギリシャ問題についてがんばった。踏みとどまった。しかし、このEUの抱える問題は、他の諸国でも起き続けている。どうなるかわからない。これからも注視し続ける。