夜間に安心して近所を歩けない国?
こんにちは。SeiZeeライターの斉藤亮太です。最近、こんな画像が回ってきますね。
近所の夜道を安心して歩けると回答する人の割合
— Spica (@Kelangdbn) 2016, 2月 8
日本、まさかのOECD平均以下 pic.twitter.com/qLP6qjfio4
といったツイートも同時に流れています。さて、ここで疑問に思うことがあります。日本って本当に危険か? ってことです。
Safe streets?
"Percentage of the population declaring feeling safe when walking alone at night in the city or area where they live(2014 or latest)"
という問なんですね。なるほど。ならここで一応日本の犯罪統計を、平成27年版の『犯罪白書』から引用します。
<1> 認知件数
(前年比) [平成7年比] 刑法犯 1,762,912件 (-155,017件,-8.1%) [-27.6%] うち一般刑法犯 1,212,654件 (-101,829件,-7.7%) [-32.0%] うち窃盗を除く一般刑法犯 315,395件 (-17,855件,-5.4%) [+48.5%] うち自動車運転過失致死傷等 550,258件 (-53,188件,-8.8%) [-15.7%]
<2> 検挙件数
(前年比) [平成7年比] 刑法犯 921,317件 (-76,593件,-7.7%) [-34.5%] うち一般刑法犯 371,059件 (-23,405件,-5.9%) [-50.7%] うち窃盗を除く一般刑法犯 135,540件 (-4,102件,-2.9%) [-18.3%]
なるほど。「うち窃盗を除く一般刑法犯」は前年度件数は333,250件です。
どれをとっても事件そのものは減っています。(認知件数*1なのには注意)*1=警察が把握できた犯罪の件数
にもかかわらず、日本は危険なのでしょうか?
おそらくですが、私の感覚としては街が危険になっているために、この数字が出ているわけではないいと思います。
さて、確認しましょう。アンケートの問は
Safe streets?
"Percentage of the population declaring feeling safe when walking alone at night in the city or area where they live(2014 or latest)"
です。お気づきになりましたか? "feeling"です。つまり、各人の主観的な判断として「夜間の街は一人で歩くには危ない」と提示されているにすぎないのです。ここでひとつ断っておくと、この「感覚」を否定するつもりは一切ありません。
私がここで言いたいことは、この調査が我々に暗示することは、社会が実態として「危険になっている」ということではなく、人々の猜疑心が強まっている、ということではなかろうか、ということです。
疑心は誰もが持つものであることは言うまでもありませんが、それがもし強まっているとしたら、「社会が危険になっている」のではなくて、「社会不安が高まっている」ということを意味するのではないのでしょうか。
さて、メディアに関わるものとして気に留めておく必要が有ることですが、社会において何らかの空気感や共通意識がつくられるのはマス・メディアの作用が大きいということは論を俟ちません。つまり、社会に不安が渦巻いているとしたらそれはメディアの操作の確率が高いです。逆も同じく、国民社会全体が高揚感につつまれる場合も同じです。
しかし、もし仮に上記の予測が合っていて「社会不安の高まりゆえの猜疑心の伸長」があるのだとしたら、それは人々の心の中に「恐怖」を生み出すこととなり、自己防衛のために凶暴性を持つようになる恐れがあることを押さえておく必要があるでしょう